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隣の席の くそれふと カタンと音を立てて隣の席に誰かが座った。(まあ誰か分かるが)随分と焦っているようで、息が荒く、微かな汗の臭いもした。まああと少しで遅刻と言う時間だから、焦らないほうがおかしいと思う。私は本に栞を挟み隣の席に顔を向ける。 「おはよ!クソレ」「くそれって言うなー」「本当の事じゃんっ」 水谷は少し落ち込んだように笑った。その顔がまあ否定はできないけどって顔をしていて少し笑える。 水谷のふわふわした髪の毛は、何時も甘いにおいがしていて、何のシャンプー使ってるんだろうと思って一回聞いたことがあった。そうしたらツバキだよって照れくさそうに笑った。(照れくさくするところなのだろうかっていうか髪を大切にしてるんだね)そう言えば水谷って何時も笑ってる気がする。何が面白いのか、もしくは無理をしてるのか。まあ無理をしているようには見えないけれど。 「あれ?何か食べてる?」「へ?あ、うん。飴舐めてるよ。水谷もいる?」 うれしそうに何味か聞いてくるその様子を見ると、飴を貰う気満々らしい。昔ながらの手作り飴は色んな色があるけれど、特に特徴のある味でもないので、私は何を言えば良いのか、少ないボキャブラリーの中から色んな言葉を吟味してみたけれど、結局見つからないまま「食べれば分かる!」などと、曖昧な表現になってしまった。 机の横にかけた鞄から、飴をひょいと一つだけ取り出した。それは赤と黄色の目に優しくない色合いだったが、所々白が垣間見えていてレトロな感じだった。何となく水谷に渡すのが惜しくなって、新しい飴を鞄から取り出す。今度は紫に近い青に白が混ざった毒々しい、昔ながらとは到底思えないような飴が出てきた。まあ水谷だしいいか、と気軽な気持ちでそれを渡した。 「うへっ何この色?、毒でももったの?!」「し、シツレー!折角飴あげたのにっ」「え、でもこの色は流石に無くない?さっきもっと綺麗な飴じゃなかった?」「(ギク)き、気のせいだよ…っ」 痛いところを突かれながら本に目を移した。嘘が苦手で直ぐに顔とか態度に出るらしいので(千代ちゃんが教えてくれた)ここは焦って誤魔化すことにした。嘘吐きと思われたかもしれない。少し胸がちくんとした。嘘吐きなんて喜んで思われたい人なんてきっと居ないだろう。(多分。ね。)一人苦笑いをしつつ本のページを捲った時、”あ――――っ!!!!”と言いつつ隣の席のクソが渾名の上に付く男の子が立ち上がった。迷惑なくらい大きな声だ。耳の奥のほうがツーンとなる。 「うっさい水谷!」「これ、俺食べたことある。姉ちゃんが前くれたのと同じ」「へー、そうなんだ!運命だね。お姉さんに気が合いますねって言っておいてよ」「そいでさ、俺の姉ちゃんがね、その時にマシュマロもよこしてきてさ」「マシュマロ?!美味しいよね!わー、私水谷姉と気が合いそう!」 水谷はうれしそうにニッコニコしている。思わず吊られて頬が緩むのを感じた。 「マシュマロはやっぱ中にジャムが入ってるヤツがいいよね」「俺は少し焦がすの好き」「焦がしすぎちゃうことない?」「わっ言わないで、あの真っ黒なマシュマロの脅威を思い出しちゃうからっ」「あれは凶器だよね…」「もう二度と失敗しないって誓うよな」 私はあの脅威のマシュマロの味を舌の上に思い浮かべながら少し苦い顔をした。いや、物凄く苦い顔かもしれない。隣で水谷が眉を顰めて苦い顔をしつつ笑っている。私の顔もそんなところだと思う。 そしてくすくす笑った後に、また話し始めた。水谷と居ると自然と会話ができる。私は別に男の子が特に苦手って訳でもないけれど、やっぱり女の子と話すのとは全然違くて少し苦手だ。でも水谷はなんだか違う。男の子と話すみたいに緊張しないし、女の子と話すより気軽だ。(あ、でもやっぱ阿部は苦手かもしれない) 「ジャムは何が入ってるの好き?」「んー。俺はやっぱ苺!」「水谷っぽい。」「何それ水谷っぽいって…」「なんだろ、わかんない!」 今度は水谷が噴出すように笑った。”らしい”ってそれどう言う意味?場合によってはこの拳が飛ぶ可能性もありうる。なんて冗談で遊んでみた。私そこまで神経質じゃないし、それにほら、寛大な心があるし!(疑わしい) 「あー、甘いもの。食べたいなぁ」「飴食べ終わったの?」「うん。水谷が来る前から舐めてたし。」 なるへそなんて頭の悪い返事が返ってくるかと思ったら、水谷は何も言わずにこちらをじぃっとみて、飴を舌の上で遊んでいるようだ。良く見れば水谷の頬は少し紅潮していた。さっき、走ってきたから?いや、でも5分くらいは経ってるし。じゃあ熱っぽいのかな?でもさっきまで赤くなかったし。い、嫌な予感。水谷は、何で、赤く、なってる、の?まさかのまさかだけど、私自意識過剰なんて思われちゃったりするかもしれないけど、そう、なの、かなっ?発情してるとか、発情してるとか、発情してるとかは無いよね!水谷に 「あ、」 世界がフリーズしたように固まる。何か大事なものを失ってしまったような気がする。おかあたまごめんなせぃ 体中の熱はある一定の部分に集中し、そのほかの部分は感覚すら消えているように思えた。(実際そんなことは無い)こじ開けられた唇のその奥に侵入してくる水谷は私の口に甘くなった舌を絡めただけで離れていった。まあそれだけで思春期真っ只中の女子高生には恥ずかしいわけで、(思春期じゃなくても恥ずかしいだろ)体中が熱くなっていくのを感じた。 自分がどうなっているのかなんて良く分からなくて、でも必死に羞恥心を隠そうとしてみたが顔が(おそらく)紅潮していて恥ずかしがっているのはバレバレだろう。 「み、みずた、に」 俺のヤツは 甘いでしょ (ば、馬鹿!)(ご、ごめんっつ、つい!)(どこがつい!なのこのウスラトンチ!クソレフト!意外と可愛い男!)(俺は誉められてるの?貶されてるの?)(貶されてるんじゃねーの)(あ、阿部!) 070907 水谷くんと甘い話で盛り上がる、がリクだったので「ええい!いっそのこと水谷くんに食べられちゃえ★」と言う壱仔の安易な考えが巻き起こした大惨事です。駄文になりましたが柳さまリクありがとう御座いました! |