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「んー・・・よぉし!」 プルプルと指先を震わせながらふわふわの生クリームの上に最後の苺を乗せ終えた。店に置いてあるような、とまではいかないが不器用な自分がやったなりには良く出来た方じゃないかと思う。あとはインターホンが鳴るのを待つだけ。は生クリームやらで汚れたエプロンを丸めて洗濯籠に放り込んだ。食器棚からコップを2つ出し、片方にはソーダ、もう片方には紅茶を注いだ。ソーダは勿論悠一郎の分だ。普段はやらないけれど、今日は特別と言うことでコップの下に薄っぺらいコルクを敷いた。うん。何か誕生日っぽい。そう1人で思いつつ2回ほど頷いた。 カーテンから覗く空はこれでもかと言うほど晴れていて、そよ風のように入り込んでくる風が秋の匂いを運んできた。近くの道路から猫が喧嘩をしている声が聞こえたが、直ぐに何者かが大きな声で「喧嘩しちゃダメだぞ!」なんて怒鳴ってるのが聞こえて、は飛ぶように玄関に向かった。その手にはクラッカーがしっかりと握られている。よぉし。悠一郎は何時もインターホン使わないから開けた瞬間にクラッカーを鳴らしてやるぞ!と言う意気込みで買ってきたクラッカーだ。 カチャン 軽い音がして、はクラッカーに力を入れた。 「、何してんの?」 「ゆ、悠一郎、このクラッカー、かた、く、て」 最悪だ。あんな軽い気持ちで買ったからきっとこんなタイミング悪くなったんだ。は意気消沈した。折角の誕生日なのに初っ端から失敗すればそうなるのも無理は無いだろう。「貸してみ」悠一郎はの手に自分の手を重ねるとクラッカーの紐をぐいっと引っ張った。するといくら力を入れても成功しなかったクラッカーが意図も簡単に破裂音を立てて紙テープを飛び散らせた。 「…」 「お前力無いのなー。ん?どうした?」 「い、いや、悠一郎も男の子だなー、と、思って。」 恥ずかしくて尻すぼみになったが、思ったことを率直に言えば悠一郎は照れくさそうに笑った。そう言えば悠一郎は今日何を着ているんだろうか。は悠一郎の髪の毛から足のつま先まで良く観察し始めた。髪の毛は何時も通り少し寝癖がついていて、何故かアンダーシャツを着てジーパンを穿いている。こんな不思議な格好が格好良く見えるようになるのだから恋ってふし、”ちゅ”と軽い音がたった。の額に柔らかい感触が残る。突然何をするんだ。び、吃驚したじゃないか。 「があんまり俺のこと見る所為だからなー」 「え、意味わかんないよ悠一郎くん!」 熱い雰囲気に水をさすようにすうっと冷たい風がたちを刺した。そうか、そう言えばここは玄関だった。は悠一郎の分のスリッパを用意するとそれを使うように言ったが無駄だったようだ。靴下のまま冷たい床をどたどたと歩いている。溜息が漏れそうになったがそれを愛のパワーで相殺した。だって今日は悠一郎の誕生日ですから。 「えと、悠一郎誕生日おめでとう。ほんとは野球部の人とかも呼ぼうと思ったんだけどね、でも、2人がいいなと思って」 ソファーに沈む悠一郎に向かいが声を掛けると、悠一郎は太陽に負けないくらいに笑った。 「じゃあ2人で思いっきり楽しもうぜ!」 「うん!ケーキ作ったけど食べる?」 「おお!スゲー!ケーキ作れんの?」 「今もって来る!」 はパタパタとスリッパを鳴らし火照った頬を隠しもせず、緩んだ頬を曝け出してキッチンから戻ってきた。それはどこか危なげな足取りでだったが、落としてはいけないと言う使命感か緊張かで落としそうには無かった。それでも悠一郎には危なく見えたのかの手からケーキをさらうと又ソファーに沈んだ。も悠一郎から拳一つ分離れてソファーに腰を下ろした。 「早く食おうぜ!」 「はいはい分かったから。今切るね」 つくづく自分は悠一郎に甘いんじゃないかと思う。悠一郎の言うことは何でも聞いちゃうし、いや逆らえないと言うのか。でもやっぱり泉くんとか花井くんとかは悠一郎を上手く操作してるしなぁ。は果物ナイフでケーキをさっと切り分けると小皿に持った。ケーキは一応ホールにしたのだが、2人だとやはり多い気がする。後でお隣さんに持っていこう。 悠一郎は待ってましたと言わんばかりに渡されたケーキを貪る。ケーキは逃げないのにかき込むように食べる姿はまるで子供だ。 「うめー」 「当たり前だよ!私が作ったんだから!」 「そうだよな!お!苺もーらい!」 「あ!!残しておいたのに!」 楽しみに取っておいた大きな苺は無残にも悠一郎の口内に収まった。少し涙ぐむがまだ苺は有るんだしまあいいかとが溜息を一つ吐いたとき、ソファーがぎしりと軋み、悠一郎の重心が寄りになった。 「ゆういっ」 視界いっぱいに愛しい人が居る。の視界はゆっくりと閉じていった。軽いキスから少しずつディープになっていき、唇を舌でこじ開けられ、口の中に甘酸っぱい異物を押し込められての視界は光を取り戻した。驚いて思わず涙が瞳に浮かぶ。それでも悠一郎の長いキスは止まらない。異物を舌で弄びながらの舌を絡めとり、わざと水音を立てるようにキスをしている。部屋中にぴちゃぴちゃという水音が響き、微かに開いている窓から少量の風が吹き込んで必死に熱くなった空気を冷ましている。それでも止まらない熱が襲ってくる。理性を崩すまいと悠一郎の肩を押すと、以外にも悠一郎は簡単に離れていった。 「ちぇー。」 「ちぇーって!突然何して」 「だってが苺欲しいって言ったんだろー」 その言葉を聞いて口に残る異物が何か良く理解できた。悠一郎は相変わらず自分の言葉に責任を持ちなさいってお母さんが言ってたとか言っている。こいつダメだなぁ。雰囲気と言うものが、と言うか空気が読めてない。え?ここは私から行くべきなのか?誘い受けなんてガラじゃないよ? 「なあ、いいでしょ?」 「んー・・・、じゃあ悠一郎がこのケーキを食べきれたら私も食べてよ」 苺と狼 美味しい苺はいりませんか?狼さん 美味しい苺が私で狼が貴方 07.10.14 田島くんハピバで捧げます!ただ苺が書きたかっただけです!すみません!OTZ |