立ち漕ぎ



「きゃっほー!」なんて可愛げもない声を上げて俺の後ろに座る女は何処のどいつだ。ほんとに締りの無い顔で笑ってやがる。野球部で言うと田島に匹敵するぐらいの笑顔だ。まあ約4ヶ月(本当に大体4ヶ月くらい)ぶりの再会なんだから、ここで喜んでくれなきゃ俺は相当自信をなくすけどな。確かと前回会ったのがGWの前だった筈。そう思うと相当久しぶりなんだよな、この笑顔。あー!わーってるよ自分でも。正直言っての締りの無い笑顔が好きだよ!それがどうした!悪いか!可愛いんだよ。口にはださねーけどさ。「ねね、梓!海行こっ海!」又何を言い出すかと思ったらんな無茶なこと言う。流石に運動部でもこんなところから海までいけねーよ。せいぜい山とか丘だな。「えー、行きたいのに…海」しょぼんとすんな!その顔に俺が弱いの知っててやってるだろ。計算高い奴め。まあそんな誰かさんを可愛いと思っちまうのは相当な重傷者(つまり俺みたいなの)だけだろうがな。「じゃあねー、西浦!梓の学校行きたい。行った事ないし」俺は折角のお盆に学校まで行きたかねーけど、やっぱこうお願いされちまうと相当無理な願い以外は、叶えてあげてえなと思っちまうわけだよ。「まあ、西浦ならまだ近いしいいけど」そういうとまた「きゃっほー!梓大好きっ」なんて無邪気に笑うもんだから、俺の心臓はびくんと飛び跳ねる。しっかり掴ってろよといって、心臓の音を掻き消すようにペダルを漕いだ。まあそっからはの他愛の無い話が続くわけだが、”友達の話”、”学校の話”、”家族の話”。俺の知らない世界で繰り広げられたの話はやっぱり珍しいもんだ。男友達の話をうれしそうに話す姿にはイラっときたが、友人関係に俺が口を出すわけにも行かないし、その衝動は心の中で処理することにした。嫉妬してるなんてダサすぎる。の話が終われば俺の番。俺の話には女の話なんて篠岡ぐらいしか出てこないし、あとは殆ど野球部のことだしな。傍から聞けば余りにも興味を惹かない内容だとしても、は真剣に聞いて真剣に笑う。ココがまあ惚れたポイントの1つでもあると言うか。「着いたぞ」といって自転車のブレーキをゆっくりかけた。足を地面に着くと、は少しはにかんで「ありがと」っつて、恥ずかしいのを誤魔化すみたいに校庭の周りのフェンスに噛付いた。少し日に焼けた肌。ファンデものっていないはずの頬はほんのり赤く染まっていた。「」何となく名前を呼べば満面の笑みで振り返る。「何?」その笑顔は反則だろ。俺は堪らずにを後ろから抱きしめた。「俺、さ。」俺は田島みたく能天気じゃないし、言いたいことをスパッといえないから、詰まりがちに喋ったら、はクスリと笑って俺の言葉を遮った。「寂しかった。私も梓に会いたかったよ?」が顔だけ後ろに向けてキスを促す。俺は流されるままその柔らかな唇へと思いを寄せた。「あいしてる」俺にしては良く言ったと思うけど、はまだまだ足りないって言う顔をした。「私ね、梓の家行きたいな。」少し染まっていた頬は本格的に赤に染まった。まったくもう。俺ってばに弱すぎだろ。こんな可愛い顔でおねだりされたぐらいで揺らぐな!俺のばかやろう!



でGO!
070810  花井くんが可愛くて仕方ない筈なのに、上手くかけないというマジック。